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三菱UFJ信託銀行のビットコイン信託保全|仕組み、背景、影響度を考察

本日2017年12月26日(火)時点のビットコイン情報をお届けします。
16時頃のビットコイン価格は、1,759,000円前後(時価総額:約29.49兆円)です。

昨日の同時刻帯より14万円ほど高い水準です。
下落の流れは止まったものの、積極的に買い進む材料も乏しい中、日本時間12月26日午後に入って突如動意付き、一時178万円台まで急騰しました。
円建て価格をドル建て価格が上回って逆転したことから、アメリカ主導の上げである可能性が指摘されています。

本日の記事では、日経新聞が本日付朝刊1面で報じた、三菱UFJ信託銀行が来年4月にも開始を予定している仮想通貨の信託保全サービスについて、その背景や仕組み、メリット・デメリット、今後の広がりなどについての所感をまとめてみたいと思います。

 

【1】三菱UFJ信託銀行が、仮想通貨の信託保全サービスを2018年4月開始予定

つい最近、韓国の仮想通貨取引所Youbit(ユービット)が、総資産の17%を失うというハッキング被害を受けて、取引所を閉鎖して破産を申請する事態となりましたが、30桁程度の電子データである秘密鍵を奪われれば所有権を失うビットコインには、常にハッキングリスクが付きまといます。

マウントゴックス以来、日本国内では主要取引所がハッキング被害にあったというニュースは聞きませんが、大量の仮想通貨が保管されている取引所には世界中からハッキング攻撃が集中しやすく、実際、海外の取引所はハッキング被害を時折被っており、資産状況悪化に伴う取引所閉鎖や盗んだコインの換金売りが連想されることから、その都度相場の急落要因となっています。

本日、日経新聞が朝刊1面で、三菱UFJ信託銀行が仮想通貨取引所向けにビットコインの信託保全サービスの提供を開始すると報じ、話題となっています。
世界初の手法を開発した上、今月には特許を出願したとする同行は、仮想通貨を信託対象財産とすることを金融庁が認めれば、2018年4月にもサービスを開始する計画としています。

www.nikkei.com

 

これまで仮想通貨業界では、東証2部上場リミックスポイントの子会社ビットポイントが2016年7月より日証金信託銀行に顧客資産を信託保全するスキームを導入しましたが、こちらは対象が「総合口座の預り金、信用取引口座の委託保証金現金、証拠金取引口座の委託証拠金現金」と現金(円)に限定されており、仮想通貨は対象となっていません。

今回、三菱UFJ信託銀行が開発した「世界初の手法」の詳細は明らかではありませんが、取引所に記録される投資家の売買情報、保有残高情報を同行も取得・記録し、取引所が破綻したり、関係者の不正が発覚した際には、同行に記録された情報に基づき、投資家の仮想通貨を保証する、としていますので、取引所システムとの連動が不可欠となる大掛かりなものとなりそうです。

 

【2】業者・金融機関がFX⇒仮想通貨へシフト、信託報酬は旨味がありそう

FXでは2010年より取引業者に義務付けられ、今や一般的となった顧客資産の信託保全ですが、想定よりかなり早いタイミングで、信託銀行が仮想通貨ビジネスに参入を表明したことに驚く人が多い状況です。

この背景には、仮想通貨取引が金融庁管轄となったことに加え、GMO、DMM、SBIなどFX業界をリードする大手企業が続々と参入し始めていることや、来年にもFXのレバレッジ規制が強化され、FX業者向けの信託保全ビジネスの成長も期待しづらくなっていることが挙げられそうです。
また、MUFGグループは、MUFGコインというデジタル通貨(≠仮想通貨)を開発し、社員を対象に利用実証実験を進めている最中で、デジタル通貨に最も積極的に取り組んでいるメガバンクグループであるため、今回の取り組みにも納得感があります。

ビットコイン、仮想通貨の急騰に伴い、大手取引所1社あたりの顧客資産は少なくとも数千億円レベルに達していると見られます。
今回の信託保全サービスの対象は、ビットコインだけのようですが、仮に、契約先取引所のビットコイン残高が3,000億円、信託報酬を年1%とすれば、信託銀行は取引所1社あたり年間30億円の収益を見込むことができる計算です。
三菱UFJ信託銀行が開発したシステムや、今後の運用管理には相応の人員・コストが必要と思われますが、導入する取引所が出てくれば十分ペイするビジネスに育ちそうです。


ただ問題は、既存の仮想通貨取引所に顧客資産を信託銀行に保全するような動きが出てくるかどうかです。
2017年4月施行の仮想通貨関連法により、現金・仮想通貨ともに顧客資産と自社資産を区分管理する必要がありますが、信託保全までは求められていません。
三菱UFJ信託銀行による仮想通貨の信託保全サービスが始まり、同業他社も追随して一般化していけば、いずれ義務化という機運が高まると思われますが、三菱UFJ信託銀行のサービスもまずはビットコイン限定で開始する予定となっており、アルトコインは対象外です。

信託保全の導入は企業PRとして使えるメリットがありますので、FX系企業、上場会社グループを中心に導入を検討する会社は出てきそうですが、全ての取引所が導入するといった展開になるまでには、法的な義務付けがない限り、相当時間が掛かりそうです。

 

【3】信託保全のメリット・デメリット、後発の金融色が強い大手企業向けか?

仮想通貨取引所ではハッキング対策上、出金などですぐに使用する分を除く大部分の顧客資産を、インターネットから切り離した機器、コールドウォレットで管理するのが通常で、国内最大手取引所bitFlyerでは80%以上をコールドウォレットで保管しているとしています。

bitFlyer のセキュリティ【bitFlyer】

万一、サーバーハッキングにあっても大半は被害を免れる格好ですが、ビットコインの急騰によりbitFlyerであれば顧客資産が1兆円規模に達していても不思議ではなく、数%盗まれただけで取り返しがつかない損失となることから、様々な管理ノウハウを駆使してガードしていると想像できます。

 

三菱UFJ信託銀行の信託保全サービスにおいても、顧客資産の100%を保全対象にしなくては片手落ちになりますので、全額相当分を対象とするものと思われますが、取引所側が管理を手放し、三菱UFJ信託銀行のアドレスに顧客のビットコインを全て送金するというのも、現実味が無さそうです。

顧客資産の100%が外部にあれば、仮想通貨の出金依頼が来た際、自社資産での立て替え出金となる恐れがあり、出金が重なった場合は資金が不足することになります。
現状多くの仮想通貨取引所は、依頼受付後ほぼ数時間以内に仮想通貨を出金しており、投資家もそのスピード感に慣れています。
信託銀行から仮想通貨を取り出す時間を考慮して、仮想通貨の出金は銀行2営業日後にするというようなルール改悪を導入した場合、投資家から反発を受けかねません。

そのため信託保全サービスでは、ビットコインアドレスに対して通常1つである秘密鍵を複数に分割するマルチシグ対応アドレスを活用して、顧客資産を管理する方式が有力と見られます。

例えば、秘密鍵を3つに分割し、そのうち2つが揃わないと送金ができないようにし、取引所が1つ、信託銀行が2つを管理する形です。
通常の出金時は、取引所が承認した後、信託銀行が追認することで実行することとし、仮に取引所の秘密鍵がハッキングされても、信託銀行が承認しなければどこにも送金できないという仕組みです。
破綻等の緊急時においては取引所の承認は必要なく、信託銀行側の承認だけで顧客に送金できるようになりますので、プライオリティは信託銀行にあります。

マルチシグ対応アドレスは既に取引所内部でも活用されていると思われますが、プライオリティを外部の信託銀行に移すことで、内部犯行なども封じることができるスキームと言えます。


難点とすれば、信託銀行の承認がなければ資金移動ができないため、スピーディーな出金実行が難しくなったり、銀行が営業を停止する休日や夜間などは特に機動性に欠ける部分が出てくる可能性が高いことです。
また、FXのように外部市場でカバー取引を行なう取引所は、そのカバー取引資金に顧客資産を利用することができず、厳しくなりそうです。
(こういった利用方法は、もともと区分管理違反かもしれませんが)

信託保全サービスの導入は、運用面で様々な変更を迫られることになりそうで、これからサービスを開始するところは別としても、既存の金融サービスとは異なる方向で独自の進化を遂げている既存の仮想通貨取引所にとれば利点ばかりではなく、二の足を踏む取引所が出てくることが予想されます。

一方、後発となるFX系企業や上場企業グループにとって、安全をウリに出来る信託保全は巻き返しを図るオプションとしては面白く、万一ハッキング被害にあった場合に本業に及ぼすダメージも考慮すると、十分検討に値するものとなりそうです。

 

本日、こちらからは以上です。

 

本ブログはビットコインなどの情報提供を目的としますが、内容の正確性を保証するものではありません。仮想通貨の取引はご自身の判断で行なってください。