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事件後対応に苛立つ金融庁|コインチェック高収益ビジネスモデルの裏側

本日2018年1月30日(火)時点のビットコイン情報をお届けします。
15時頃のビットコイン価格は、1,198,000円前後(時価総額:約20.17兆円)です。

昨日の同時刻帯より6万円ほど安い水準です。
日本時間1月29日夕方より下落傾向が鮮明となりました。
コインチェック事件が連日ニュース番組で取り上げられるなど話題を独占する中、コインチェック社の取引・出金停止は依然解除されず、昨日出された関東財務局による業務改善命令が問題の長期化を予感させるなど、他の取引所を利用する投資家の間にも重いムードが漂いつつあります。

本日の記事では、コインチェック事件後の同社並びに仮想通貨業界の動きに苛立ちを隠せない金融庁と、463億円の補填を表明したコインチェック社の企業規模や高収益ビジネスモデルについて取り上げたいと思います。

 

【1】コインチェック事件で、同社と仮想通貨業界に苛立つ金融庁

金融庁が、580億円相当の流出事故を起こしたコインチェック社に報告を求めたところ、極めて不十分な報告内容であったことや、ガバナンス不在と疑われる管理体制だったことに、厳しい目線を向けています。

今回の事故についての原因究明や顧客への適切な対応、責任の所在の明確化、再発防止策などを2月13日(火)までに書面提出するよう求める業務改善命令が出されましたが、当局が納得できる内容でなかった場合は何度も再提出させられることになる可能性が高く、問題の長期化が懸念されます。

jp.reuters.com

 

金融庁は仮想通貨業界に対して、コインチェック事件を業界全体の問題と捉えて対処するよう求めているものの、自主規制団体がマネーパートナーズを会長職に置き、ほぼ全ての取引所が加盟する日本仮想通貨事業者協会(JCBA)と、bitFlyerを代表理事に据える日本ブロックチェーン協会(JBA)に分裂したままで、統合話が一向に進んでいません。
なお、コインチェック社は両方の団体に加盟しています。

日経新聞などは今回の事件を受けて2つの団体が統合する方針を固めたと報じましたが、すぐさまJBA側が報道内容を事実上否定するコメントを発表しています。
統合が進まない背景には、業界内の主導権争いや、大手取引所間の軋轢があると見られており、金融庁幹部も「業界が一大事なのに内輪もめしている場合か」と苛立ちを隠せない状況です。

www.nikkei.com

 

一部報道に関してコメントを掲載いたしました | JBA

 

【2】463億円補填表明のコインチェック社、高収益を生み出すビジネスモデル

今回流出したネム(XEM)は時価総額580億円、保有者数は26万人と発表されており、企業規模を示すデータは全て未開示ではあるものの、13通貨を取り扱うコインチェック社全体での預かり資産は数千億〜1兆円レベル、利用者数は100万人規模と見られます。

また、同社の大塚取締役は出演したテレビ番組で月間取引高は4兆円(昨年12月度)と発言しており、レバレッジ取引を含むと10兆円近いbitFlyerに軍配が上がるものの、ビットコイン現物取引では国内トップの取引高を誇っています。

一方、国内10数社ある仮想通貨取引所の中でも、コインチェック社は特殊な仕組みでサービスを運営しており、ビットコインだけは顧客同士の取引をマッチングさせる証券取引所と同様の取引所方式で、その他12種類のアルトコインは同社が取引の相手方となるFXと同様のOTC、いわゆる販売所方式を採用しています。

ビットコイン取引は手数料無料でサービス提供しており、収益源とはならない反面、アルトコイン取引は5%前後の手数料を上乗せしたレートで売買サービスを提供し、その差益で相当の利益を得ています。

昨年12月の月間取引高4兆円のうち、その多くは手数料無料のビットコイン取引と考えられるものの、仮に10%相当の4,000億円がアルトコイン取引だったとすれば、4,000億円×手数料5%=200億円の粗利益を12月単体で得ていた計算となります。
昨年12月は仮想通貨マーケットが急騰し、過去最高の取引高を記録した月であったため、突出した利益になったとは言え、かなりの高収益体質であることは伺えます。

今回同社が補填を表明した463億円は、資本金1億円未満のベンチャー企業がひねり出せる額としては相当に多額ですが、これまでの内部留保と今後の収益性を鑑みて、補填可能と判断したように見受けられます。

同社がデータ開示を渋るのは、利用者の間で同社のアルトコイン取引手数料の高さは有名であったものの、具体的な数値でこのような高収益構造を知られたくなかったことも一因と言えそうです。

 

【3】高収益ビジネスモデルの裏に、顧客資産管理体制についての疑惑も

コインチェック社のアルトコイン取引は、顧客の注文に合わせて海外大手取引所Poloniexにカバー取引を行なう形で実現しています。
顧客に提示する価格やチャートも、Poloniexのビットコイン建てレートを基に、BTC/JPYレートを掛け合わせて円建てレートを生成していると見られます。

以前から取引している人の間では知られている公然の秘密とは言え、最近参入した投資家の間ではコインチェック社がアルトコイン取引を停止しているのにもかかわらず、レートが動いていることを不思議がる人も出ています。

今回の流出事故により仮想通貨資産に対するセキュリティ管理体制の甘さが露呈した格好ですが、今度は販売したアルトコインを全量自社保管していない可能性や、顧客資産と自己資産の分別管理体制についての疑惑も浮上し始めています。


顧客から注文がある都度、外部取引所でカバー取引を行なう場合、当然ながら購入資金が必要となる一方、元手となるビットコインの送金には時間が掛かりますので、カバー取引のための資金を予め外部取引所に預託しておく必要が生じます。

カバー取引資金が全て自己資金であれば、顧客とのアルトコイン取引を成立させた後、すぐに外部取引所でカバー取引を成立させ、そのアルトコインを自社に送金することで問題なく成り立ちますが、これにはある程度の自己資金と頻繁に出し入れする精密な資金コントロールが必要です。
また、ビットコインネットワークが混雑して送金詰まりが起きると、更にコントロールの難易度は増します。

仮に、この問題を回避するために、カバー取引資金として顧客資産の一部を事前に外部取引所に回していたとすれば、分別管理違反と見做される恐れがありますし、事前にまとめて購入した分を販売する方式では自社分と顧客分が混在して管理されている可能性が指摘され、また、売り買いがある程度自社内で相殺されることを見越して毎回カバー取引および自社への送金作業を行なっていないケースにおいては、顧客保有数量分のアルトコインを自社ウォレットで保管していない(不足している)時期がある疑いが生じます。

今のところは全て推測に過ぎないものの、セキュリティより利便性や収益性を追求してきた実態が明るみになったことや、株主の意向という名の秘密主義を貫こうとする企業文化が、様々な疑いを加速させている面は否めません。

今後の金融庁への報告並びに事情聴取においては、顧客資産の分別保管体制に不備はなかったかどうかも焦点の一つとなりそうです。

 

本日、こちらからは以上です。

 

本ブログはビットコインなどの情報提供を目的としますが、内容の正確性を保証するものではありません。仮想通貨の取引はご自身の判断で行なってください。