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分かりやすさ重視で、技術的な説明は極力省きます。噛み砕きすぎて一部不正確だったり、解説に主観が交じったりもしますが、分かりやすさ重視のためとご理解ください。

仮想通貨の企業会計ルール|ICOの資金調達は「売上」で法人税が?

本日2017年10月6日(金)時点のビットコイン情報をお届けします。
16時頃のビットコイン価格は、493,000円前後(時価総額:約8.18兆円)です。
昨日の下落から反発し、一昨日(10/4)の水準も上回ってきました。

昨夜、仮想通貨に関する企業会計ルールの原案が示されたことを日経新聞が報じました。
本日の記事では、この報道の先にあるICOの資金調達に法人税が課せられるという見方や、テックビューロ社のCOMSAへの影響などを取り上げたいと思います。

 

【1】仮想通貨に関する企業会計ルールの原案(時価評価)が示される

日本の会計基準を策定する企業会計基準委員会が、これまではっきりしていなかった仮想通貨に関する企業会計ルールの原案を示したことを、日経新聞が報じました。

正式には11月に改めて公表されるようですが、ドル、ユーロなどの外貨と同様、仮想通貨も時価で評価した上、期末に簿価との差額を損益として計上するという方針が提示されることとなり、これまで会計処理面がネックとなり、仮想通貨の保有を躊躇っていた企業も取り組みやすくなりそうです。

www.nikkei.com

 

一方、話題のICOで資金調達した場合の会計処理については、まだ整理が進んでいないようです。

企業が仮想通貨技術を使った資金調達(ICO=イニシャル・コイン・オファリング)した場合の会計処理などが残る論点とみられる。 

 

【2】話題のICO、テックビューロ社のCOMSAトークン販売の仕組み

本日現在、COMSA(コムサ)の資金調達額は80億円を突破し、いよいよ100億円の大台が見えてきました。(セールは11月6日14時まで)

COMSA Token Sale Dashboard

9月に先行実施したプレセールでの大口購入者向けボーナス(+20%)や、10月2日〜10月25日実施の早期購入ボーナス(+14%〜+5%)、自社発行のZaifトークンで購入した場合のボーナス(+2%)に加え、購入数分の10%を紹介者に配布するというアフィリエイト制を導入したため、プロジェクト発表当初からSNSやブログを中心に大きな話題となるなど、巧妙なマーケティング施策でスタートダッシュに成功したと言えます。

そのCOMSAプラットフォームの第1号案件であるCOMSAトークンは下記の仕組みで販売されています。

 

COMSAトークン販売の仕組み
  • 1USD相当の購入に対して、1COMSAトークンを割り当て(販売価格は1CMS=1USD)
  • 売り出し時に、発行上限数は設定されない(いくらでも販売可)
  • セール終了時、販売数分の2倍を総発行数としてロック(以降販売しない)
  • 増やした分(販売数分と同数)をステークホルダーで分配する
  • 10%は紹介者の利益、40%はテックビューロ関係者の利益、残り50%も同社が使用

 

最終的に1億ドル分のCOMSAトークン(単位:CMS)が売れた場合、購入者に配布する1億CMSのほか、同額の1億CMSが生み出されてステークホルダーに分配されます。
(合計2億CMSが総発行数)

セール終了時点で、1CMSの価値が半分になる設計のように感じますが、今回のCOMSAトークンを第2弾以降のICOの支払に用いる場合、+5%のボーナスが付与される特権があるとされています。(100CMS⇒105の価値になる)

第2弾以降のICOが人気化すれば、自然とCOMSAトークンの需要が高まるという説明と、昨今の仮想通貨の高騰を受けて、値上がりを期待した投資家が多く参入している模様です。

 

逆に言えば、第2弾以降のICOに魅力がなければ、COMSAトークンの価値は暴落してもおかしくありませんので、今般のCAMPFIRE社の離脱や運営面での不備を見た出資済みの投資家層から不満の声が多く上がっている状況です。

 

【3】ICOで資金調達した場合、調達額は売上となり法人税が掛かる?

昨日10月5日に虎ノ門ヒルズ森タワーで開催されたICOカンファレンスにおいて、ICOで法人が資金調達した場合、調達額は企業の「売上」とみなされてしまい、経費を差し引いた残りが利益となり「法人税が課税」される、という見方が示され、衝撃が走りました。
(実効税率30.86%〜34.81%とのこと)

 

第三者割当増資(株)での資金調達であれば、受取金をそのまま事業に利用できるのに対し、ICOで資金調達(仮想通貨・トークンの販売)した場合、諸経費を差し引いた残額に30%強もの税金を課せられるのであれば調達効果が相当薄れます。

仮に、企業側がそれでも良いと考えても、出資する側から見れば投資対象の価値が、出資後に税金で30%目減りすることに繋がるため、躊躇う人が続出しそうです。

まさしく冒頭でご紹介した企業会計基準委員会が未整理の部分であり、この辺りがはっきりするまで、ICOで資金調達を検討している企業の動きが遅くなるかもしれません。

 

【4】既に80億円以上集めているテックビューロ社は?

テックビューロ社が現在実施中のICOで、最終的に1億ドル分(約112億円)のCOMSAトークンが売れた場合、同社の法人税はどうなるのでしょうか?

その全てが売上とみなされた場合、諸経費などを差し引いたとしても、30億円レベルの法人税が課されてしまうのか?、と気になって情報を改めて調べると、予めこの問題を考慮してか、COMSAトークンはテックビューロ社本体ではなく、同社のスイス子会社が販売しているという体裁を取っていました。

COMSA トークンセール利用規約

販売者はスイス連邦で設立手続が行われている当社の完全子会社である。販売者は、購入者からの支援により得られた拠出をもとに、COMSA COREおよびCOMSA HUBを開発し、COMSAプラットフォーム上でトークン販売を行うことを希望する事業者に対し、COMSAプラットフォームを提供する。 

 

ただこの場合でも、下記方式で利益分配されるため、112億円のうち最低でもテックビューロ社に還元される28億円相当は課税対象(法人税8-9億円レベル)となる可能性が残りそうです。

  • 増やした分(販売数分と同数)をステークホルダーで分配する
  • 10%は紹介者の利益、40%はテックビューロ関係者の利益、残り50%も同社が使用

 

もちろん資金調達した仮想通貨を売却すれば納税は可能ですが、支払に使われたビットコイン、イーサリアム、ネム、Zaifトークンにとっては大きな売り圧力が生まれることになりますし(自社取引所で売却するなら尚更)、開発などに使える資金が相当目減りするため、ICOでの資金調達が「売上」とみなされるかどうかで運命が大きく分かれそうです。

 

なお、スイス子会社が販売元となっている点は、利用規約には載せられているものの、多くの人が目を通すホワイトペーパー(目論見書)には一切記載がないため、テックビューロ社本体が販売していると誤解している人も多そうです。

リーガルチェックは当然済んでいると思われますが、騒動が長引くようであれば、トラブルが生じた際の準拠法と管轄裁判所がスイスとなっている点を問題視する人が今後増えてくるかもしれません。

COMSA トークンセール利用規約

14.準拠法と管轄裁判所
本利用規約は(その法域を問わず)他の法域の法令の適用を引き起こすような抵触法の原則にかかわらず、スイス連邦の法令に準拠し、解釈、執行されるものとします。本利用規約またはその主題、またはその成立(契約外の請求の紛争を含みます)から生じるもしくはこれらに関係するあらゆる当事者間の紛争は、スイス連邦ツーク州における裁判所で解決されるものとします。 

 

ICOのあり方について、法規制面では金融庁、ホワイトペーパーなどの情報開示面では
JCBAなど自主規制団体、税制面では企業会計基準委員会の指針発表が待たれます。

 

本日、こちらからは以上です。

 

本ブログはビットコインなどの情報提供を目的としますが、内容の正確性を保証するものではありません。仮想通貨の取引はご自身の判断で行なってください。